コラム

2025/05/16

遺産分割の方法、調停機関について

1 遺産分割の方法について

遺産分割の方法について

遺産分割は、遺産の終局的な権利者を誰とするのかを確定させることをいいます。
このような遺産分割の方法としては、相続人だけで話し合って解決する方法と家庭裁判所を利用して解決する方法があります。そして、家庭裁判所を利用して解決する方法には、調停を申し立てる方法と審判を申し立てる方法があります。調停は話し合いで解決することを目指しますが、審判は、話し合いで解決することができない場合に、家庭裁判所が、遺産の終局的な権利者を誰とするかを確定します。

家庭裁判所を利用する場合、調停を申し立てても、審判を申し立てても、いずれでも構いません(先に調停を申し立てなければならないという約束事はありません。)。

ただ、例えば、話し合いができない等として、審判を申し立てた場合であっても、家庭裁判所は、この審判事件を調停に付して(家事事件手続法274条1項)、調停として手続を進めることが多いようです。
そして、この場合において、話し合いで解決できなかった場合(調停が成立しなかった場合)は、審判手続に戻ります。また、調停を申し立てた場合であっても、話し合いで解決ができなかった場合(調停が成立しなかった場合)、この調停は、審判手続に移行し、家庭裁判所が、遺産の終局的な権利者を誰とするかを確定します。この他に、「調停に代わる審判」(家事事件手続法284条)というのがありますが、これについては、また、別の機会にお話ししたいと思います。

なお、調停を申し立てた場合(調停を申し立てた人を「申立人」、調停を申し立てられた人を「相手方」といいます。)、相手方となった相続人の中には、「訴えられた!なんで、訴えられなあかんの!」といって感情を害する方がいます。申立人からすると、「別に、訴えたわけではないし、話し合いができひんから調停を申し立てただけやん。」ということなのですが、相手方からすると、「裁判にかけられた!」ということのようです。

調停を申し立てることは決して悪いことではなく、調停を申し立てられた側も、何か悪いことをしたから申し立てられたわけではないのですが、相手方となる相続人に対し、何ら連絡することなくいきなり調停を申し立てると、「裁判所から何か書類がきてるで」ということで驚かれる場合がありますので、調停を申し立てる際は、相手方となる相続人に対し、「今回、相続人だけでは話し合いで解決できなかったので、裁判所で話し合いをする方法を選択し、調停を申し立てることにしました。裁判所から申立書が送付されてくると思いますが、よろしくお願いします。」等一言告げておくことをおすすめします。

2 遺産分割調停は、誰が行うのでしょうか
(調停機関)

遺産分割調停は、誰が行うのでしょうか

前回のコラムにおいて、遺産分割を進める上で、実務上、重要な3ステップ(相続人の確定・遺産の確定・分割方法の確定)があるということを説明しましたが、遺産分割調停でも、主に、この3ステップについて、相続人から意見や主張を聞き、順次、整理、調整が行われます。
  このような遺産分割調停は、通常、裁判官1名と調停委員(調停委員には、民事調停委員と家事調停委員の2種類があり、遺産分割調停は家事調停委員が担当します。)2名で構成される「調停委員会」により行われます。

ただ、実際に相続人から事情や意見を聞いたり、これをもとに整理、調整することは、調停委員2名で行われることが多いようです(もっとも、この場合でも、調停委員は、調停委員会を構成している裁判官に聴取した事情等を説明し、裁判官と協議しながら行っていると思われます。)。
調停委員は、最高裁判所により任命された非常勤の裁判所職員です。調停委員になるためには、弁護士などの資格を有している必要はありませんが、社会生活の上で豊富な知識経験を有するなど人格見識の高い40歳以上70歳未満であることが必要とされています。なお、調停委員は、最高裁判所が任命しますが、その前提として、家庭裁判所が調停委員候補者を面接するなどして選考し、最高裁判所に任命の上申(この人を調停委員に任命しても大丈夫です、というようなこと)をしているようです。

そして、遺産分割調停を担当する調停委員も必ずしも弁護士などの資格を有しているわけではありませんが、遺産分割の専門性に鑑み、弁護士や司法書士あるいは不動産鑑定士などの資格を有している調停委員が担当することが多いようです。

(文責 弁護士 吉岡真一)

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